『 白薔薇の剣 』
−最後の王女の騎士録−
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第41章 聖母
――かつて、一人の少女がいた。
その少女は世界を、滅亡の危機から救ったとされる。
大陸間で起こった戦争。
後の世に禁忌として刻まれる幾多の恐ろしい魔術がその時代に生み出された。
その時代、世界を包んだのは安穏の神の御手ではなく、破滅への道筋であった。
数少ない残った文献によれば、少女が現れたのは世界終焉の一歩前。
最大の禁忌≠フ直前であったという。
神に遣わされたとされる彼女は、戦火を鎮め、すべての黒の魔術を封じ込めた。
世界の平和を見届けた彼女は、その力を一本の剣に託し、この世界を去った。
そして残された者たちは彼女を神の化身として讃えた。
彼女が何者で、どこから来てどこへ向かったか。詳しい事は何一つわからない。
ただ一つわかっているのはその名。
――サンクトゥマリア。
後の世に、聖母と讃えられし1人の娘。
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