楽しい家造りを PART1

 日本の高温多湿地域には木造在来工法の家が適している

1         技術の伝承 大工職 左官職 建具職等

2         材料の持つ特性(素材) 国産材を使用する理由

3         直営方式による価格の透明化、明確化

4          建築界の現状 経済性、効率化 現場の職人達 

5         街の風景

6         空調器(エアコン)を必要とする家、必要としない家

温暖化、エネルギ-を考える

7         まとめ

1          技術の伝承

在あらゆる分野において技術の伝承が行われなくなっています

建築の分野においても同様です。特に木造建築においては顕著です。

1)         大工職人 

現在木造住宅の98%以上はプレカット等工場で加工され、現場においてはただ組みたてるだけで、大工職人の腕を発揮する場はほとんどありません。今では少し経験すれば誰にでも出来る技術しか必要の無い建物ばかりになっています。
昔ながらの木材に墨付けをして、継ぎ手(鎌継ぎ、車知継ぎ、台持ち継ぎ、金輪継ぎ、等々)を選択しノミ等により手刻みの技術を習得し、また木材の性質を理解して適材適所に配置をして、一軒の家を造り上げる技術には素晴らしいものがあります。又そうして職人が手間暇を掛けて造り上げられた家には、人が造ったんだという温もりが感じられ住む人に安らぎを感じさせてくれます。
ただし、一軒の家を造り上げる技術等を習得するには、やはり10年は掛かります。技術を一つ一つ習得し、その技術を生かして物を造り上げる喜びは、何物にも変えられないものがあると思います

比較

自然素材(無垢材,塗り壁)を使用して、昔ながらの大工職人によって木材(土台、柱、桁,梁,丸太梁等)に墨付けをして、手刻みによる住宅造りは、刻みに1ヶ月半〜2ヶ月程掛かります。その間にも木材は乾燥収縮をしますので、大工職人はそれを予測して継ぎ手や柄穴を少しきつめに刻みますので建前の時、昔ながらの掛け矢で叩かないと納ませんが、骨組み出来あがった段階では建物は動きません。又日本の木造建築の良さの一つである丸太梁は、もう墨付けをして刻める大工職人は殆どいなくなっています。丸太梁を見せるデザインは何とも心を落ち着かせるものがあります。(動かないという事は継ぎ手等がきちっと納まっているという事で、補強金物はあくまでも補助の役目です。よくこの家は揺れないなと職人さんは言って感心していますがそれが大工職人の腕です)一つ一つ手を加え工夫をして丁寧に、手間隙をかけた手造り住宅は自然素材が持っている豊な表情が家全体に現れ、暖かく落ちついた感じにしてくれます。
一言で言えば、居心地が良い

一方、プレカット等工場で加工され、新建材を使用し規格化され、大工職人の腕を振るう所も殆ど無く機械的に作られた住宅は、家に表情が無く冷たさを感じます。又プレカットの場合カットしてから建前までの間の乾燥収縮は考慮できないので、建前時は掛け矢が必要なく簡単に納まってしまいますが、骨組が出来あがった段階で建物はかなり揺れます。(揺れるという事は補強金物が単なる補助ではなく主になってしまいます)(プレカットの場合、丸太梁は機械では出来ないので手で刻む事になります。プレカットで単価を低くしても丸太の手刻み代が高いので逆に手刻みより高くなってしまうのでプレカットの建物では残念ながら丸太梁は殆ど使われません)
一言で言うと居心地があまり良くない

人から受け継いだ日本の大工職人の技は世界に誇るべく技です。
それが今では後継者も少なく後数年で本当の大工職人が居なくなってしまいます。今建築に携わっている人は、真剣に考えなければならないことだと思います

2)         左官職

    左官の技術も今は殆ど失われつつあり、職人の高齢化も進んでいます
     左官の仕事は今では殆ど無く、住宅においては玄関の床のタイル貼りくらいなもので、(これも技術を研鑚した職人では無くあまり腕の良 いとは言えない人達が行っている状態です)左官の本来の仕事である塗り壁は殆どゼロに近い状態です。(和室の壁でさえ今では殆どがビニ−ルクロスで貼られています)これでは技術を伝承する土壌がありません。塗り壁の良さは表情がある事です。塗る職人の腕の良さは勿論ですが、同じ材質でも塗り方によってその表情が微妙に異なっていて部屋の雰囲気も変わり楽しいものになります。勿論材質を変えることによっても変わります。このことはビニ−ルクロス貼りでは味わう事の出来ない事です。
元々この地方の家は小舞を結い荒壁を塗り、中塗り、仕上等手間隙を掛けて気候風土に合った家造りをしていたのですが、現在は荒壁が断熱材に、仕上げがビニ−ルクロス変わりその為か室内に調湿作用が殆ど無くなり真夏はエアコンが無いと過ごせなくなっています
元々日本の家が持っている特性生かし、また職人の腕を生かした風通しの良い家を造りたいものです。(楽しいお話 施主の方々は建物が建ってこないとなかなか空間の広がりが解からないので、どんな塗り方が部屋の広さや用途に合うのか解からないので、ある程度出来あがった時点で、事前に見本塗りを作った中から相談して決めるのですが見本塗りが全てではないし、塗り方の微妙な違いを全て表すのは出来ませんので、左官さん、施主、私達が集まってその場であれやこれや言いながら決めています。これがまた左官さんと施主さんの人となりが出て楽しいものです。ですから出来あがった時の喜びもひとしおです)また塗り壁は、調湿作用もありこの地方の高温多湿地域には適しています
 私達は日頃から左官さんの仕事振りを見ていますが、その腕の見毎さと、豊富なバリエイションには本当に感心しています。壁がひび割れしない様に、季節により又天候により材料の調合を微妙に変える技は経験以外の何ものでもありません。先人から受け継いだこの技術は大切に次世代に伝承しなければと思っています。

3)         建具職

建具職人今では少なくなり高齢化が進み後継者不足です
木製の建具も今では殆どが既製品(工場生産品)が使用される時代で建具職人にて造られる建具は、和室の襖と障子位のものです。それも近い将来には工場生産品に成るでしょう。
手造り建具の良さは建具の組み方が豊富に有り、建具の種類によって色々組み合わせを変えて造ることが出来ることです。ですから全てがオリジナル建具であり、材が持っている質感をそのまま生かせ又材そのものの木目等が(材一つ一つの木目も異なっていますので木目の組み合わせも)デザインにもなります。建具そのものが空間を演出する一つにも成り得ます。
無垢材で一つ一つ建具職人の腕を生かし工夫をしながら丁寧に造られた建具は、年数が経つと共に、既製品とは違いその趣きが増してきます。(家の歴史と共にあるといえるでしょう)(単価に関しては、源材(無垢材)を山の製材所から仕入れて建具職人に制作をして頂いても、既製品の新建材の建具と殆ど変わらないか、むしろ安くなる場合が多いです)

2          材料の持っている特性を生かす

1)木材  国産材を使用する理由

在日本の山林には建築等に使用できる木材は豊富にあります。
国土の70%以上山林に覆われているこの国では、木材は貴重な資源で
ここで一つのデ−タ−を示します
国内で使用される木材の、国産材と輸入材の割合は、1960年代始め国産材70%以上、輸入材30%以下であったのが、今では国産材20%以下、輸入材80%以上という状況で、森林資源はこの30年から40年の間に輸入材が増え続けたため、国産材は資源として伐採されなかったので2倍以上になっています。そのため前記の様に山には木材が豊富にあります。問題は国産材が使われなくなった為に山にお金が流れなくなって、下草刈、間伐等が出来なくなり山の地力が無くなっていることです。(私達は、森から多くの恩恵を受けて来ました。山に地力があると雨水は地面に浸み込み、ゆっくりと養分を含んだ飲み水に適した美味しい水になると同時にその水が河川を通して海に流れ出すと、その河口にプランクトンが発生して魚が寄ってきて豊富な漁場なり近海漁業生まれます。勿論山に地力があれば洪水の発生も少なくなります…話が長くなりますので又の機会にいたします
私達は、今山にある豊富な森林資源を、建築資材として又家具等国産材を使用して造ることが有効な資源活用になり、また山にお金が流れることにより山の手入れが出来ることになります。(国産材をふんだんに使用した家は単価が高い思われがちですが、決してそうではありません。
山と直接つながることにより、良い材料が手頃な値段で、又市場には出ない面白い材もありそれらを使用する事により、より値打ちな家を造ることが可能になります)
昔から言われていることですが、その地で育った木を使うのが一番良い。
建てた後もその地の気候風土の中で呼吸するからです。又木は育った年数だけは持つと言われます(使い方によればもっと持ちます)(民家等で100年200年と建っている物も有りますが、昔は裏山の木で100年200年育った木を使用しているからです。通常の住宅では70年前後の木が使用されていますので木造在来住宅で国産材を使用した家は最低でも70年前後は十分に住むことが出来ます)
国産の無垢材を構造材は勿論ですが、床板、壁板、天井材等にふんだんに使用するのは、この地方の高温多湿の気候に合っているからです。
それは木材が持っている、水分を吸収及び放出する性質があるからです。
梅雨どきから夏の湿度の高い時期は室内の水分を木材が吸収し、冬場の乾燥する時期には水分を放出して室内の湿度を調節します。(55%〜65%に保ちます)夏場木材や漆喰等の塗り壁は水分を吸収します、その時気体から液体になりますその時に液化熱か発生するわけですが、液化される時に木材や塗り壁等の表面が冷やされて涼しくなります。又逆に水分が放出される時は、気化熱が発生しますその時は木材や塗り壁等の表面暖められて暖かくなります。この事からしても無垢材や塗り壁の家は冬温かく、夏は涼しいと言えます。まさにこの地方の気候風土には適していると思います。
又国産の自然(天然)素材を多く使用するのは、廃棄される場合出来るだけ害に成らない様にする為です。無垢の木材や土からは有毒な物質は出ませんが、合板(接着剤から)やビニ−ルクロスは有毒物質が出ます。
私達は将来の事を考えた場合、造る時だけではなく、廃棄する時のことも充分に配慮しなければ成らないと思います。(現在火災等で死亡するのは、殆ど新建材(ビニ−ルクロス等)から発生する有毒ガスを吸いこんで起きています)
本当に山にお金が流れないと山を護っていただく樵さんいなくなってしまいます。本当に樵さんの技術は素晴らしいです。(一本の木を数分で思った方向に切り倒してしまいます)その樵さんの後継者も今は本当に少なくなっています。

3          直営方式による価格の透明化、明確化

直営方式 一般的には施主は建築会社、工務店、ハウスメ−カ−等と工事契約をいたします。直営方式は、施主が工事に関わる各業者と個々に直接契約を結びます。
この方式は、ディメリットは殆ど無くメリットの多いものです。
1 まずは価格が全て明確になります。工事毎に細かい明細書を作成し一つ一つの価格が明確に解かります(工事原価・・上乗せの無い金額 )。工事中に変更が生じた場合は、差額が明確に提示されます。価格がより明確になり透明化されます。事務所にて全ての業者は施主と直接一対一でその場で金額を記入してお互いに署名捺印をして契約いたします。(その際事前に施主には見積内容は説明してありますが、直接、工事方法や見積内容等についてお互いに説明したい事や、聞きたい事をその場で話し合いますので、全業種の契約が済むのに2時間ほどかかりますが施主、業者共々新鮮な方法なので喜んで頂いています) 

2 工事に関しては施主と直接契約しますので、工事業者が明確になると同時に誰々の家を(施主の個人名)造っているんだと言う気持と、又誰が工事をしたのかが明確になりますので、各職人は自分の責任と腕と誇りに掛け腕を振るいますので、より良い家が出来上がります。(全ての工事は誰々が行ったという個人名で言われます)又工事の支払方法は、契約金がといわれる前金は一切なく、全て出来高払いでしかも施主より直接支払われることになっています。ですから各業者は、自然と施主の方を向いて工事をする事に成りますので、より施主の要望の叶った家が出来あがる事に成ります。工事価格が全て明確になっていますので変更がしたい場合、施主が直接各業者と単価の話に及んでも何ら問題には成りません。ですから工事現場では、施主と業者は世間話やら、工事の内容等についてよく話していたりして、本当に楽しく工事が進められています。施主と業者が協力し合って、現場が楽しければ必ず良い家が出来あがると思っていますし、現実に良い家が出来あがっています。(仕事との内容には厳しいですが)常は、各業者は施主と直接契約をすることはなく、工務店、建設会社と契約していますので(町の工務店では殆ど各業者は工務店と契約する事はありません・不思議な事です?) 各業者は施主の方を向いて工事をするのではなく、工務店や建築会社の方を向いていますので、施主の要望が直接各業者に伝わらないので、必ずしも施主の希望する家が出来あがるとは言い難いです。(中々伝わらない話は良く聞きます)各業者は、各業種において施主建築会社当がいくらで契約しているのか全く知らされていないので、各業者は施主と直接単価の話は出来ません。(まして工事の内容について各業者と施主が話し合う事ありません

3 自分で出来る事は自分でしませんか。(住み手参加)

住宅造りの中には技術を習得し経験を積んだ者しか出来ない部分と、少し位は多少の不具合があっても住む人がある程度納得すれば良い部分(住みながら馴染んでゆく部分)が有ります。例えば床の塗装、外部の塗装(ウッドデッキ)等に関しては何年かおきに塗装か必要になります。その部分に関しては家族で行う、その事が家に対して愛着が生まれることにもなります。そう言った部分は家族でしませんかと言うことです。実際私達は行っていて施主の方たちにも喜んで参加して頂いています。(直営方式の成せる事です)

4          建築界の現況 経済性、効率性、現場の職人達
1)       経済性,効率性
 建築業界に限った事ではないと思いますが、経済性、効率性を考えた場合まず何を考えるかと言いますと工期(工程)の短縮です。工期(工)が短ければ短いほど利益率は高くなります。工期を短縮するには如何するかといえば、作業性を高める事です。長年技術を習得し経験豊富で腕の良い職人が、その場に応じた方法を考え創意工夫をしながら、住む人の事を思い一つ一つ丁寧に造ることを必要としないで、誰でも少し経験すれば出来る工法にする事です。作業性を高める為には規格された製品を、ただ機械的に組み立てるだけの単純な作業で物が出来上がるようにする事です。がしかし、建物を造る事において、基本的な事が解からないで造るとどうなるかと言いますと、多少の不具合があったとしても、良くわからないで作業をしてしまい、どんどん先に進んでしまいます。工期に追われて中身がどうであれ表面さえが整っていれば良い、とにかく早く早くと急いで造ればどんな物が出来るのかは想像すれば簡単に分ることだと思います
現在現場の多くは本当に出来映えに良し悪しもわからないで造っている職人と呼ばれる人ばかりに成っています。これでは本当に住む人にとって良い家が来上がるのでしょうか
現況は、大半の住宅は2ヶ月か3ヶ月であっという間に完成してしまいます。人が30年,40年,50年死を迎えるまで住む家としてこれで良いのでしょうか
木造在来工法で国産材を使用し、長年掛かって技術を習得し経験豊富な腕の良い職人達が集まって、一つ一つ丁寧に家を作るにはどうしても工期が掛かります(9ヶ月〜1年)が、職人の顔も見えますし、工事の進行状況や、工事の内容も施主の方々にも良くわかり安心していられると思います。(何が違うかと言いますと、人が一つ一つ住む人の事を想いながら造った家は、優しさと、暖かさに満ちた家が出来あがります。それは住んでみて始めて感じる事です。住宅ではこの事が大切だと想います)
現在現場で働くちゃんとした技術習得した職人は本当に評価されてい
ません。又本当に良い職人の働く場がなくなっています。日々こつこつと汗水を流して働いている人が報われない社会はどこか間違っていると思います。

2)        現場の職人達

現在住宅建築に携わっている職人達のうちどれだけの人達が、自分が住みたいと思って造っているのでしょか。大半の職人は住みたいと思って造ってはいません。これ程悲しい事はありません。
自分が住みたいと思っていない家に住まされる、施主の立場はどうなるのでしょうか。人が一生住む家です、その家を造っている人たちが、こんな家には住みたくないと思いながら造っていたとしたら住みたいと思いますか。住みたくないですよね。でも現実はそうですよ。
では何故そう思って造っているのでしょうか。
それは使用されている素材(材料)、造り方、工期、工法等が本当に住む人にとって、良い建物が出来上がると思って造っていないからです。現場で働いているこころある人達は、造られている建物の内容が(質)良く分っているからです。
国産材を使用して手刻みによる木造在来工法の家を造っている職人達は(経験を積んだ腕の確かな)本当に充実感を味わって、楽しんで働いています。造っている家がこの地方には適している,夏涼しく、冬は暖かい事を肌で感じ知っているからです。
ただ国産材をふんだんに取り入れた建物は、単価高いと多く施主の方々は思っていらっしゃいますが、決してそんな事はありません。大金を投じて、住宅を手に入れるのですから、造る前に労力を惜しまないで、住宅展示場だけではなく、町の工務店、建築会社、設計事務所、大工さん、インタ−ネット等をこまめに探せば必ず本当に、終の棲家に相応しい住まいを手に入れる事が出来ると思います(同じ価格で全く異なった質の住宅が出来あがりますよ)
大切なのは住宅を造る人たちが、こんな住宅なら自分たちも住みたいな、又造りがいがあるな、造っていて楽しいなと思いながら造られる家を手に入れる事です。このようにして造られた住宅は、間違いなく施主の方々には住んでからも住み心地が良いといわれると思います。

5          街の風景

1)住宅建築の公共性
街には街に相応しい風景があると思います。盛り場には盛り場の、オフィス街にはオフィス街の、住宅街には住宅街に相応しい風景が、しかもその地域に相応しい風景があると思います。その風景を壊すことはその街を落ち着きのない、だらしのない風景に変えてしまいます。現在日本全体が何々開発や区画整理という名のもとにその地に相応しい風景が壊されつつあります。人は目で見る物や(視覚)や肌で感じる物(感覚)に極く自然に影響を受けてしまうと思います。特に感受性の強い子供の頃はその影響が大きい言えるのではないでしょうか。
かっては、私達が普段日常生活を営んでいる街(土地)には、その街に相応しい風景がありました(源風景)。それは心支えでも有り拠り所でも有りました(決して過去を懐かしんでいるのでは有りません)。現在では普段の日常生活の中で、心安らげる落ち着いた、風景がどんどん無くなっています。風景を形造る一つである建物の形態、色彩等において統一性の無いわけの分らない物になっています。建物一つ一つは個人の所有物ではありますが、個人が思うが侭に、周りのことを(環境)何も考えずに勝手に造って良いものかどうか、今本当に考えなければと思います。街造りは行政だけにその責任を、押し付けるのではなく、一人一人が建物等を造る時、周りの環境等を考えて子供達にとっても良い環境を残したいものです。

6 空調機(エアコン)を必要とする家,必要としない家

(温暖化、エネルギ−を考える)
今から30年くらい前までは、真夏に33度を越えるような日は殆どありませんでした。ここ10数年は連日の様に35度を越えるとんでもない真夏になっています。その原因は多くあると思いますが、昔は殆ど一般家庭には必要の無かった空調機(エアコン)が、今では殆どの家庭には付いています。それも一台ではなく3台4台も(各部屋毎に)付いていている家庭もあります。これらが一斉に使われれば空調機(エアコン)から外気に放出される放出熱はすごいものがあり、これで外気が熱されれば、外気温が高くなるのは当然といえるのではないでしょうか。
昔から高温多湿地域である日本の地方のおいては、家を造る場合は、夏をむねとすべしといわれています。夏の暑さを如何に凌ぐかを考慮して家造りをすると言うことです。ではどのような家が造られていたのでしょうか。自分達が住んでいる近くの山林から切り出した木材や、土を使用して、軒が深くて風通しのいい家を造ってきました。それは木材や土が湿気を吸い室内を快適な湿度を保ってくれる作用があるからです。(国産材の項で書きました気化熱、液化熱のことです)
では現在国産の木材を使用した木造在来工法の家はどうかと言いますと(床・無垢材(杉板・桧) 壁・無垢材(杉)塗り壁(漆喰・その他)天井・無垢材(杉))、真夏に閉めきった状態の家に、外から帰ってきた時むっとする暑さはなく冷っとした冷たさを感じます。又実際に住んでいる人に聞きますと、昨年のことですが、多少暑さは感じましたが空調機は無くても(空調機が付けてありません)扇風機さえあれば別になんともありませんでした。空気がほかの家とは違って、なんかさらっとしているとの事です。(調湿作用かあるからでしょう)(昔の民家を思い出していただければ分ると思います)
では今何故空調機が必要になっているかと言いますと、殆どの家が新建材と言われる合板やビニ−ルクロスで造られているからです。合板や(水分を含むと貼ってある接着剤が駄目になり剥がれてしまいます)ビニ−ルクロスは湿気を吸ってはくれませんので、室内は高温多湿で蒸し暑くて空調機がなくてはとても過ごせません。
地球環境に優しいと考えるならば住宅においては、暑ければ空調機使えばいいというのではなく、出来るだけエネルギ−を多く使う機械に頼らなくてもいい家造りを考える必要があるのではないでしょうか。

7 まとめ

 今、私達大人世代は、国の600兆とも700兆とも言われている借金(負の遺産)(地方の借金も含めると1000兆を超えるとも言われていますが)を子供達の世代に押つけようとしていますが、それだけではなくあらゆる分野から出ている有害な廃棄物の処分さえ押つけようとしています。又有害な廃棄物を極力少なくしようとしている努力している姿さえ見せようとはしていません。それは何故かといいますと、経済性、効率性に主眼がおかれ、多少経済性や効率性が悪くても、子供達の世代に良いものを残そうとする目が欠落しているからです。世の中必ずしも新しく作り出されるものが良い物とは限りません。立ち止まってゆっくり物を見つめることも必要ではないでしょうか。
又今、あらゆる分野において日本の国土風土から生み出された国土風土に合った世界に誇れる伝統文化が失われようとしています。何故か、経済性、効率性が主眼となり、長期的に物事を考えるのでは無く、目先の利益が最優先され、子供達に先人から受け継いだ良いものを残そうという目が欠落しているからです。
多くの心ある大人達はこの事に気付いていますが、具体的に何をしたらいいのか戸惑っていると思います。たまたま私は建築に携わっていますので建築の分野で言いますと、 以前、永六輔さんが尺貫法復権運動で曲尺、鯨尺を販売して捕まってもいいと、マスコミを通して発言をされそのかいがあって、曲尺、鯨尺は今でも売られています。曲尺は建築の分野では大工職人欠かせない道具ですが、残念ながら現在曲尺等を使用した大工職人の手による建物はどんどん減っています。大工職人による木造在来工法の家は手間暇が掛かり経済性、効率性とは程遠いからです。木造在来工法の家は、高温多湿であるこの地方にあった工法です。是非現在作られている木造在来工法の家を、大工職人が大工小屋で木材に墨をつけ手で刻む所から家が完成するまでの工程を一度見てみてください。そうすれば大工職人以下瓦、左官、建具職人等の造った家の良さがよく分ると思います。
又長期間掛かって技術を習得した職人と言われる人の評価があまりにも低ので、その後継者も今ではどんどん少なくなっています。このまま行きますと10年もすれば職人が殆ど居なくなり神社、仏閣以外の木造建築は殆ど出来なってしまいます。
一般的に言って、国産の無垢材を使用した木造住宅は単価が高いと思っていらっしゃる方か多いと思います。勿論高い家もありますが(坪単価70万、80万それ以上)色んな方法を取り入れて行えば、決して安いとは言えませんが坪単価55〜60万位でも充分可能です。
私達はこの地方の気候風土合った国産の無垢材を多く使用した(県内産)木造住宅を一人でも多くの人に住んで頂きたいと思うのと同時に、子供達に大工職をはじめ瓦、左官、建具職等の日本の誇るべく技術を伝える義務があると思っています。(地道な日常活動をする事が一番だと思いますがそれでは手遅れになりそうです)
現在の日本の状況を私達大人が、子供達の立場に立って将来を展望して見た場合どうでしょうか。とても将来に希望を持てる状態にはなれ無いと思います。俺達にカスのカス(負の遺産ばかり)ばかり押つけて、これではとてもまともに働く気になれ無いと思うのではないでしょうか。
子供達が余りにもかわいそうでは・・・。
最後に、姉歯事件(構造計算偽装)により建築士の制度や法等が問題になり、制度改革やら法整備等色々言われていますが、いくら制度や法を厳しくしても問題は解決しません。何故この問題が起きたのかの、根本原因を吟味して正さなければ、又いずれの日かに同じような問題が起きると思います。欠陥住宅の問題も同じだと思います。
一戸建ての個人住宅に限って言えば、住宅を造る過程(工事期間を通して)においてもっと積極的に関わりを持つ事です。住宅を買うものから、施主も参加して造るものに変えることです。親子で楽しめる良い機会です是非参加して下さい。(参加することに拒絶反応を示す建設会社があれば、その会社を選ばない事です)