医療費減らす発想そのものが間違い

 後期高齢者医療制度は、憲法が保障している「法の下の平等」に反するものです。75歳以上の高齢者を切り離し、健康保険の対象から強制的に外すやり方は、年齢による命の差別そのものです。考え方自体が、根本的に間違っています。
 お年寄りにかかる医療費をいかに減らすかという発想で、長生きが「悪いこと」だと思わせるようなやり方は、日本の未来にとっても、極めて不幸なことです。

 政府・与党が保険料軽減などの見直しを検討していますが、制度の一部を手直ししてすむ話ではなく、根本的な議論が必要です。
 後期高齢者医療制度も医師不足も、根っこには同じ問題があります。医療にお金をかけすぎると経済の足かせになるという考え方で、政府が社会保障にかかる予算を毎年2200憶円減らし続けてきました。その結果、世界の頂点にあった日本の医療制度が、すさまじい勢いで崩壊しています。
 イギリスでは、サッチャー政権が強力に医療費を減らした結果、手術待ちが1年、医師が外国に逃げる…といった具合に、医療制度が崩れました。2000年にブレア政権が、医療費を50%増額する政策に転換しましたが、まだ目に見える回復はしていません。一度壊れた医療をたて直すには、巨額の費用と長い歳月を要します。医療崩壊というのは、本当に恐ろしいことです。

 日本では、事態をさらに悪くしないために、今すぐ手を尽くすことが必要です。
 日本の医療費は、OECD(経済協力開発機構)加盟30カ国のなかで最低レベルです。
 医療費抑制政策を抜本的に転換し、病気になっても安心な国へと一歩を踏み出すべきです。


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