『 白薔薇の剣 』

−最後の王女の騎士録−

 

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 第40章  誰が哀を望み

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「何が運命を決め、何が定めへと導くのか」
 夜の闇の中、女は一人呟いた。
 ――そこには誰かの意志があるのか?
 彼女が視線を送るその先には、少女が立っている。
 夜を含んだ黒髪の。
 闇を身にまとったような少女。
「何が運命を決め」
 誰が、何を、そこに求めるのか。
 黒髪の少女は空を見上げている。
 女も同じように仰いでみたが、そこにあるはずの星が、彼女には見えなかった。
 だが彼女は満足そうに微笑み、「美しい星だこと」と言った。
 その声は、少女には届かない。
 だがじっと見つめる。
 ――滅びを背負いし白の少女と。
 もう一人の、この少女。
「神のご加護がありますように」
 呟いて、祈りを捧げ。
 女は背を向ける。
 その顔には聖母のような笑みを浮かべて。
 やがて消えて行く、その瞬間まで。




 誰が運命を決め、
 誰が導くのか知れず。
 道は決まっている。だが、まだ、結論は出ていない。
「抗い、立ち向かえ」
 最期のその時まで。




 鼓動が尽きる、その瞬間まで。
 ――例え誰が、あいを望もうとも。

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