フレンズ便り 第19号 2005年04月

 
 

 「愛・地球博」も始まり、開催地の瀬戸市は活気にあふれています。新年度を迎え「サークル・フレンズ」の活動も万博のように活気あるものにしたいと思います。

 今年度は厚生労働省の行っている「高次脳機能障害支援モデル事業」の最終年です。モデル事業の成果をふまえ、どの様な施策に結びつくのか注意深く見守り、当事者にとってより良い支援になるよう願うものです。このモデル事業は、平成13年度から始まりましたが、年々増える高次脳機能障害者の後遺症、記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害などで、日常生活・社会生活への適応が困難となる障害であるにもかかわらず、一般国民はもとより、医療や福祉に関わる専門家の間でも十分理解されていない事や、診断・リハビリテェーション・生活支援などの手法も確立していなかった事が背景に有りました。
  平成15年度には「モデル事業中間報告書」も出され、診断基準、訓練プログラム、社会復帰・生活・介護支援プログラムなどの取りまとめが報告されました。又、この成果をもとに16・17年度でより具体的な支援の検討に取り組んでいます。
このような現状のモデル事業を知ってもらう為、「サークル・フレンズ」主催の学習会を去る2月19日に開催致しました。以下に学習会の報告を致します。

 「第5回高次脳機能障害学習会」の報告

 

平成17年2月19日(土)、瀬戸保健センター(やすらぎ会館)にて「第5回高次脳機能障害学習会」を開催しました。講師には「脳外傷友の会みずほ」副会長の古謝由美氏をお迎えしました。

小雨模様のあいにくの天気にもかかわらず、67名(行政9名、福祉10名、家族24名を含む)の皆様に参加して頂きました。この場をお借りしまして御礼申し上げます。

テーマ【家族から見た高次脳機能障害支援モデル事業】

講演の概要                
 @ モデル事業の背景と取り組み
 A 総合リハビリテェーションセンターのない
   三重県の取り組み(医療機関のネットワークで対応)
 B 家族の役割
 C 支援・・国、地域への期待
 D ビデオ・・脳外傷者の生活の様子

〈参加者の声〉

○ 学習会で共感したこと   支援者I            
学習会に参加するたびに感じるのは、家族の当事者へ対する愛情と並々ならぬ障害との闘いです。古謝さんの話もとても重いものを感じました。話の中でいくつか共感したポイントや感想を述べます。
1.高次脳機能障害の周知
 いまだに医療関係者の中にも十分認識されていない高次脳機能障害はどんな障害なのか、幸い、マスコミでも多く取り上げられるようになり少しずつ知られるようになってきたところですが、まだ一般には知らない方が多いのが現状だと思います。モデル事業の役割の一つとして行政・福祉・医療関係者への周知がされる事を期待したいです。
 古謝さんのすてきなところは、行政等への期待だけではなく、家族としてできることを実践されている事だと感じました。日頃の地道な周知活動や今回のような学習会の企画で、私たちもさらに情報を共有することができました。
2.三重県の高次脳機能障害支援モデル事業とは
 総合リハビリセンターの必要性を感じつつも、地域内ネットワークで新しい形の支援体制を作っている三重県を高く評価されていました。これは、障害保健福祉の改革案(改革のグランドデザイン案)にも出されている、『市町村を中心に、年齢、障害種別、疾病を超えた地域福祉の実現』にも繋がる重要なポイントだと思います。
3.家族の役割が大切
 「家族は、家族に出来る支援をするべき。家族のほうがリハビリの専門家」との意見には勇気付けられる方も見えるでしょうし、現状の厳しさも伝わってきました。私たち支援者もこのモデル事業により、                               
専門家としての支援方法をきっちり学びなおし、取り組んでいく必要があります。
4.地域への期待
 将来のことを考えると家族だけでは支えきれないという不安は大きいものがあります。モデル事業が発展し、地域の中でよい支援体制が作られることを私も期待しています。モデル事業と改革のグランドデザイン案という大きな動きの中で、一個人として出来ることは少ないですが、高次脳機能障害は誰にも起こりうる障害だということを考えると、人事ではなく今より少しでも当事者の方が住みやすい、生きやすい社会になるよう、何か私なりに探していくことも大切だと感じました。
5.最後に
 今回の学習会で、私自身モデル事業についての再学習をする良い機会になりました。「サークル・フレンズ」のみなさん、古謝さん、ありがとうございました。

○支援の輪を広げたい   支援者N
  たびたび、学習会に参加させて頂いています。
学習会に参加するたびに痛切に思うことは、「高次脳機能障害」自体が社会的に認識されていないという実態です。「認識されていないから理解されない。医師も認識していない。行政も認識していない。当然、制度のハザマにあって、何らの救済措置の対象となっていない。否、当事者やその家族でさえ認識されていないから、何を為すべきかの見当もつかず、悩み苦しんでいる」、という実態を僅かでも変えるお手伝いができないものか、模索し続けているというのが現実です。多くの人々に「高次脳機能障害」を広く知らしめていく機会を設けたり、行政機関に働きかけたり、「サークル・フレンズ」の事業展開について自助、自立を妨げることなく、支援する方法は何かを考えたりしています。
  現在、私が「サークル・フレンズ」を支援できることは、近隣の市町で同じ立場で協力して頂ける人を見いだし、その人達からその自治体での取り組みを促して頂くことと考えています。個人の力には限りがありますが、支援の輪を広げたいとの思いを学習会参加のたびに、新たにしています。

○再確認できた学習会   当事者家族K
  夫は平成11年8月に事故に遭い、3週間後に意識を回復しました。診断書には「高次脳機能障害」と書かれていましたが、どんな障害なのかよく分りませんでした。夫の場合、意識が戻った時には感情の抑制が出来ず、点滴の針を抜こうとするので手を押さえると、殴ったり蹴ったりしてとても暴れました。又自分の病室やトイレの場所など何度教えても覚えられず、毎日の生活そのものが記憶出来ずに闇の中に消えていきました。
  退院後は散歩や買い物など外へ連れ出すように心がけましたが、後ろから来る人の足音がうるさいとか本当に些細なことで大きな声を出し私の方が疲れ果てました。なんとか頑張って私一人で面倒を見ようと思っていたのですが、一人で抱えるには夫の障害は大きすぎました。
夫は体にふらつきが有り(体幹機能障害)身体障害者手帳3級を頂いていたので、ディサービスを利用する事にしました。
 講師の古謝さんも「一人で抱え込まないように、夫婦の場合は親子の場合と違って立場の違いから来る難しさが有る」と話されました。
夫も何も出来なくなっても「家長だ」という意識はとても強く、妻である私にあれこれ言われたくないようです。立場の違いから来る難しさまでは理解してもらえないだろうと思っていたのですが、とても嬉しい話しでした。
  又、どんなに良い事でもそれがストレスになってはいけないとの話しに、心の負担が軽くなりました。自分に出来ることを頑張りすぎないでやって行く、そう再確認できた学習会でした。

○寄り添って    ボランティアO
  家族の思いを講師の古謝さんから直接聞き、改めてその大変さを知りました。公的な支援もまだまだ不十分で、これからの制度的な保障と地域での支援が実現するとよいな、と思いました。
  古謝さんは講演の中で、「家族の大変さは大きいのですが、当事者が一番苦しんでいる。」と述べられていました。
 自分は、当事者の方と交流する機会があるのですが、楽しそうにしている時、悲しそうにしている時、いろいろな場面に遭遇します。悲しそうな表情をしている時、「気持ちを分かってもらえない。理解してもらえない、うまく表現することが出来ない。」とよく聞きます。 外見から、あるいは少し接しただけでは分ってもらえない、そんな苦しみが他の障害者より大きいようです。
  自分も視力障害者ですが、パソコンボランティアとしてお手伝いさせていただいています。同じ当事者として分かり合える部分があると思います。出来るだけ当事者の立場に立ち協力して行きたいと思っています。                 

○初めの一歩    福祉関係者M  
 「第5回高次脳機能障害学習会」にはじめて参加し、今まで高次脳機能障害について全く勉強していない自分を反省しました。参加者の皆さんが真剣に取り組んでいる姿に感心するばかりです。
  今日学んだことを自分の口から友達へ・友達からまた友達へ「サークル・フレンズ」の活動を知ってもらうことからはじめたいと思いました。何が自分に出来るのか考えてみたいと思います。
                       
○必要な支援    ボランティアS        
 私は1年前にボランティアとして「サークル・フレンズ」の仲間に入れて頂きましたが、それまでは全く「高次脳機脳障害」という言葉さえ知らない状態でした。そして、サークルに参加させて頂いていても、まだまだこの障害についてのいろいろな問題を本当に理解出来ているわけではありませんでした。
今回の講師、古謝さんのお話を聞いていて、障害者の方と家族の方の思いが間近に伝わって来るのを感じ、強く心を打たれました。
 私たちは誰もが、いつ事故に出会うか分からない昨今ですが、その思わぬ事故によっていつでもこの障害の当事者になり得ることを知ると、誰も、この問題は無関心でいられないと思います。
 本当に当事者の方個人の力や努力だけでは、乗り越えることが難しい問題がたくさんあることを改めて考えさせられました。将来にわたって地域社会がこれを支え、行政がバックアップする仕組みを早急に作ることが必要なのだと実感しました。そのためにも、私たちが出来ることを見つけて少しでも手助けが出来れば・・と改めて感じております。

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