フレンズ便り 第44号 2010年4月 「サークル・フレンズ」

 
 厚生労働大臣政務官へ要望書を提出しました

 昨年誕生した民主党政権は、現在施行されている「障害者自立支援法」を廃止し、新たな「総合福祉サービス法(仮称)」(以下新法という)の検討を今年の1月より行っています。この機会に高次脳機能障害者が新法にきちんと組み込まれるように、要望書の提出を決意しました。たまたま厚生労働大臣政務官 山井和則衆議院議員は10年来の知人で、政務官経由で長妻厚生労働大臣宛の要望書としました。
  3月4日、雨の中、他の高次脳機能障害者団体の代表の方たちと一緒に山井議員の国会事務所を訪問しました。政務官は生憎国会開会中のため不在でしたが、議員秘書官と厚生労働省の課長補佐2名の方に要望内容を説明させていただきました。また、参加した代表の方達もそれぞれの思いと要望を話されました。厚労省の方には、予定の時間がオーバーするほど熱心に聞いていただきました。
 今後、新法制定に際し、高次脳機能障害者の施策がきちんと反映されることを多いに切望します。尚、一緒に行った団体と代表者の方達は、下記の通りです。

・NPO法人日本脳外傷友の会 会長 東川悦子氏
・NPO法人東京高次脳機能障害協議会 理事長 細見みゑ氏
・高次脳機能障害を考えるサークルエコー代表 高橋俊夫氏
・高次脳機能障害を考えるサークルエコー元代表 田辺和子氏
また、先方の同席者は下記の通りです。
・厚生労働省 障害保健福祉部 企画課課長補佐 高城 亮氏
・厚生労働省 同部 精神・障害保健課課長補佐 川島邦彦氏
・厚生労働大臣政務官 山井和則議員 近沢秘書官
追記:厚生労働省の上記課長補佐2名の方は、現在実施されている「支援普及事業」の全国連絡協議会の厚生労働省代表委員です。また、高城氏は国の幹事会委員の副幹事長で、まさに支援普及事業の中心的な方です。(記:豊田 烈)

要望内容は以下のとおりです。

2010年3月4日
厚生労働大臣 長妻 昭 殿
高次脳機能障害を考えるサークル・フレンズ
住所 愛知県瀬戸市西山町1-60-20
代表者 豊田幸子
高次脳機能障害を考えるサークルエコー
住所 東京都武蔵野市境3-11-18
代表者 高橋俊夫

高次脳機能障害者支援策検討のお願い

1.高次脳機能障害の法への明記
新法制定にあたって、高次機能障害者をはじめ制度の狭間にいる障害者について、「障害者の範囲」の中で是非本文に明記いただき、法律上の公平さを謳っていただきますようお願いいたします。

2.支援サービス決定の仕組みの検討
今後の制度検討は、「制度改革推進体制」で示されてうるとおり、専門部会を設置し、当事者の家族団体、当事者、専門家等による広範囲で公平な議論を通して具体化していただきたいと思います。その際重要な視点は、障害者の広範囲にわたる障害特性の把握と障害者が必要とする支援ニーズを調査し、そのうえで支援サービスとしてどんなサービスが必要か、またどの程度の量が必要かを決める仕組みの検討ではないかと思っています。

3.「医療と福祉の連続したケア」の仕組みの確立
高次脳機能障害者の発症時の救急対応、治療、リハビリ、社会復帰までの一連のケアはわが国では制度化されておらず、後遺障害が残った当事者本人の自立生活は、困難になる場合が多く、また家族の生活が犠牲にならざるをえないため、社会的に大きな損失になっています。
現在施行されている「支援普及事業」の継続事業として、「医療と福祉の連続したケア」の仕組みを確立するためのモデル事業を是非実施していただきたい。
また、各地域にあっては保健福祉圏域ごとに地域拠点機関を指定することを法的に担保していただきたい。
このことは、当事者の地域での自立生活や、社会復帰のために重要な施策となりますので、国レベル、都道府県レベルでの実施を是非お願いします。結果として大きな経済的損失を防ぐことにつながります。

4.生活行動の自立を支援する施策「生活適応援助(生活版ジョブコーチ)事業」の検討
高次脳機能障害者の地域生活を支援する環境整備は、全国的に見て絶対的に遅れています。
名古屋市総合リハビリテーションセンターで、昨年度より取組みが始まっている「生活適応援助(生活版ジョブコーチ)研究事業」は、障害者が在宅生活に戻った段階で、生活行動の自立を支援するための「生活適応援助事業(注)」です。
現行の高次脳機能障害支援普及機関と連携して、在宅生活の自立支援を充実させ、社会復帰への足がかりとするため、その役割は大きいと考えています。
今後2年間生活版ジョブコーチ研究事業を行い、その成果を踏まえて、制度化にむけた活動を推進いたします。
この施策は、上記2項の支援サービス事業の重要な位置づけになると確信しています。
(注):適切な支援方法をコーチする人材を育成し、在宅に派遣する事業です。

5.「支援普及事業」追加施策のお願い
現在、「支援普及事業」が各地域で実施されていますが、今後さらに普及促進するため、下記事項を追加して実施いただきますようお願いいたします。
(1)関係する精神、神経科などの医療従事者が、高次脳機能障害者を理解し、適切に診断できるような環境整備をお願いします。
また、早期の診断やリハビリが、当事者の自立回復を大変大きく左右しますので、診療報酬の加算など具体的な制度支援を検討してください。
(2)就学児童の高次脳機能障害者の支援には、教育関係者の教育や研修がかかせません。早急な対策をお願いします。
(3)生活地域単位での、「医療と介護、そして社会復帰の連続したケア」の体制が必要です。
そのためのワンストップサービスセンターの設置をお願いします。

6.重度者対策の取組み
高次脳機能障害支援モデル事業、普及事業を経てもなお、重度の高次脳機能障害者に対しては、特にリハビリ病院の受け入れがない、地域資源を利用する道も閉ざされているなどの実情があります。
重度の高次脳機能障害者の実態を把握し先進的、重点的な取組みをする機関・団体を奨励し、その手法を普及してください。

 活動報告
平成22年1月17日(日) 「見えない障害 高次脳機能障害支援セミナー」へ参加
 主催:豊橋市 NPO法人高次脳機能障害者支援「笑い太鼓」 高次脳機能障害者支援センター
 講師:中島八十一氏(国立障害者リハビリテーションセンター学院長)

平成22年1月20日(水) 東濃看護専門学校で特別講師を務める
テーマ:ご存知ですか?高次脳機能障害〜家族の立場から〜

学生さんの感想:最近、TVやニュースで高次脳機能障害という言葉を見聞きしていましたが、実際の家族の言葉には苦労や悲しみ、迷いが詰まっており、何をどうすれば解決するのか?全くわからない思いがしました。行政だけが対応すれば解決するとも思えないし、地域のつながりとか、周りの理解とか、本当は少し興味をもてばよい方向へと進んで行くような気がしました。

高次脳機能障害は脳卒中のイメージが強いが、外見が健常者と同じでも重度の障害を抱えている方がおられることを知りました。わたしの病院にも救急で脳損傷の患者が入ってくることは多く、救命されて退院はできるが、その後の在宅生活までは病院が保証しないので、今回こういった現実が実際におきていることで、我々医療従事者が退院後の生活での影響を視野にいれておくことや授産施設などの受け皿を知っておく重要さを感じました。

救命医療の進歩は良い事であるが、その裏に高次脳機能障害があることを知った。生命の危機を脱した後に重度の後遺症が残っていることがわかったので、今後は社会復帰後にも意識したいと思う。地域社会の力がいろんな方面で必要であると感じた。

平成22年1月24日(日) 家族勉強会&新年会
平成22年1月27日(水) 豊田市家族会 先輩会員として経験談をスピーチ
平成22年1月27日(水) 愛知脳損傷協議会(ABIA)定例会
議題:高次脳機能障害者の年金取得について
講師に愛知県医療ソーシャルワーカー協会 会長を招き勉強会
平成22年1月30日(土) 瀬戸市ボランティア交流会へ参加
「サークル・フレンズ」活動と高次脳機能障害のPR
平成22年2月24日(水) 豊田市家族会
テーマ:高次脳機能障害者の生活と就労
講師:名古屋リハ高次脳機能障害支援部支援課長
平成22年2月24日(水) 愛知脳損傷協議会(ABIA)定例会
平成22年2月25日〜26日 第2回「生活版ジョブコーチ」養成研修
今回の研修では、前回学んだ基礎知識や技術を活かし、各グループがモデル事例を報告、検討しました。22年度、23年度は実際の事例研修に入ります。
平成22年3月14日(日) 家族勉強会
テーマ:障害福祉サービスと障害程度区分
講師:愛知県立大学准教授 吉川氏
勉強後の意見:サービスはとにかく利用しよう。みながサービスを利用することで行政にもその必要性がわかってもらえる。高次脳機能障害は障害手帳がなくても利用できるが区分認定が取得できないとサービスが受けられない。介護保険が基本になっている区分認定は、高次脳機能障害者に反映されていないが、これから反映されることを期待する。
平成22年3月19日(金) 愛知県高次脳機能障害支援普及事業相談支援体制連絡調整委員会
愛知脳損傷協議会(ABIA)として要望書を提出
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