高齢者パワー

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老いてこそ輝けから

 高齢者が大切にされる時代は間違いなく芽生えつつあります。「老いは暗くて重い」というイメージは過去の姿としなければなりません。私たちは親から生まれたのであって私たちが親を生んだのではありません。この単純な事実を認めるならばすべて祖先から恩義を受けていることに気づきます。祖先を敬う気持ちはここから生まれます。そして、生きている祖先、それが高齢者にほかなりません。
 これまでの社会は、高齢者が肩身の狭い思いで暮らす長い歴史でした。しかし今は高齢者パワーが社会変革の重な一を担う時代を迎えつつあると思います。
 充実した高齢者福祉を実現させるためには、高齢者自身がその取り組みに加わらなければなりません。そのためには「高齢者=社会的弱者」「高齢者は社会のお荷物」という社会的偏見を高齢者自身が捨て去らなければなりません。

 今や高齢者にはさまざまの役割が期待されています。その大切な役割の一つは文化の継承です。人が次の時代に残す貴重な遺産は文化です。文化をかにしていく営みこそ人類の歴史です。豊富な知恵を身にけた高齢者は文化継承の重な担い手です。だから人は年老いても生き続ける意があります。
 もう1つ大切な役割は、社会の歪を取り除く取り組みに高齢者が参加する中で、「かさ」とは何かを学び、一人ひとりが成長していくことだと思います。かな社会とは社会の仕組みだけでなく、そこに住む人たちの心もかになることでなければなりません。社会変革と自己変革とは一体です。
 デンマークの福祉社会も自然に実現できたのではありません。女性の社会進出という事態も大きく手伝って、女性、市民、労働者たちの努力で実現したのだと聞きます。そこに長い時間をかけて培われてきた彼らの人権意識の成熟をみる思いがします。
福祉とは弱者の救済でないのです。それは権なのです。福祉政策を弱者の救済政策と誤った理解にとどまる限り当の福祉は実現しません。

今後ますます高齢化社会になるといいます。それは社会にとって大きなお荷物がますます増大して大変なことになるという声を耳にしますが、むしろ高齢者がいよいよ当の底力を発揮する新しい時代を迎えつつあると思います。
 今全国に広がりつつある年金者組合の活動は注目に値すると思います。高齢者が社会の片隅で日陰者のように小さくなって暮らしているのでなく、堂々と歪んだ政治を変える役割を担いつつあるように思われる。


長い間続いてきた、高齢者が冷たくされる時代は終わろうとしています。私たちは社会変革のもしい一を担っていることに確信と誇りを持つべだと思います。私たち高齢者は身にけたかな知恵を発揮し、力を合わせて平和でかな社会を創り出し、次の世代に受け渡すという壮大な任務をはたさなければなりません。
そうした取り組みの中で、互いに励まし合いながら、きびしい環境の中でも老いの意義な生き方の一つとして充実した生きがいを生みだしていけるでしょう。
 生きるとは今を大切にすることです。社会変革とは、はるか未来の課題でなく、今の生活をよりかに生きることと紙の裏です。
 高齢者にとって新しい時代がれつつあるように思います。歴史は確実に変化し続けていると思います。
 もちろん高齢者と言ってもさまざまですから、自分の力で自分の生活自体を維持していけない人たちもたくさんいます。そうした人たちを私たちは力を合わせて支え合っていかなければなりません。助け合いながら社会をかにする。これが「高齢者パワー」です。


1 老いは人生の孤島ではなく、人生の延長戦上に現れる一時期。だから、老いも人生そのものであり、老いを意識しようがしまいが、青壮年期に何を考えどんな生き方をしたかがその人の老いの姿に色濃く反映する。

2 老いの姿は千差別で一でないから、さまざまな老いの姿に学ぶことは大切だが、自分自身の老いの姿を求めつづることが老いの課題である。

3 才能と知恵とは同じではなく、才能は若くして開花するが、知恵は豊富な経験と知識を必要とする。だから、老いて初めてみえてくるものがたくさんある。

4
 老いは、老いを取り巻く環境によって大きく左右される。老いの暗くて重いイメージは老いに随する特性でなく、福祉政策の行きとどいた社会では、老いは人生の終ではなく、充実した時期であり、安らぎの時期でもある。

5 「高齢者=社会的弱者」という社会的な偏見を捨て、高齢者自身がかな社会作りの一を担う時代を迎えつつある。

 老いは、確かに一面では体力や気力の衰えを伴いますが、長年にわたって身につけてきた豊富な知恵を生かした、老人だからこそできる、輝くいきかたがあります。同時に、老いとはかくあるべきというべきモデルなんてないように思います。一人ひとりがさまざまな老いの姿に学びながら自分の老いを自分らしく生きることだと思います。

 奇跡ともいうべき人間というすばらしい生き物がこの地球上に誕生しました。そのすばらしい生き物の終わりが暗さと苦痛にちたものであっていいはずがありません。
 たくさんの老いの姿のなかには、燃え続ける老いもあれば心穏やかな老いもあります。老いはそれぞれの姿をとりますが、感謝と思いやりの気持ちを持ち、常に学ぶ心をれずひた向きに生きる。それがすべてではないでしょうか。それ以上の何があるのでしょうか。そうした一途な姿の中から色とりどりの光で、老いは輝くのではないでしょうか。まさに「老いてこそ輝け」です。


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